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百器徒然袋ー風 [小説(本格ミステリー)]

京極夏彦の『百器徒然袋ー風』を読みました。

百器徒然袋-風 (講談社文庫 (き39-12))講談社文庫/2007.10/¥1,086。

『百器徒然袋―雨 』に続いて、
今回も榎木津が主役。
京極夏彦の作品はみんなおもしろいけど、
京極堂シリーズの中では
あたしは断然、この2冊が好きです。

なんてゆーか、爽快。
いや、痛快?

他の京極堂シリーズは
どちらかといえば、全体的にしっとりした?感じなんだけど、
この2冊は、メチャクチャ…というか、ムチャクチャというか…。

ひたすら榎木津が楽しそう(笑)。
そして、そういう榎木津の、
自由奔放で唯我独尊・傍若無人なところが好き…というか、うらやましい。


さて、で、
短編集、というには1つずつが長いけど、
3話収録。

ストーリー的に一番好きなのは、2話目の「雲外鏡」。
関西の自称・霊能探偵と、榎木津のやり取りが笑えます。

で、一番興味深いのは、3話目の「面霊気」。
この話の中で、たびたび、「仮面」という言葉が出てくるんだけど
(例えば、p.659の本島の独白とか、p.688-689の京極の台詞)、
それがすごく、おもしろいし、わかりやすい。

少し話は飛んで…。

このブログでは度々登場してますが、
ドイツの社会学者に、ニクラス・ルーマンという人がいます。
で、その人が「Person」っていう概念を使うんだけど…
(日本語訳では「パースン」とか「人格」と訳されてます)。

ルーマンのPerson概念を、ちゃんと説明するのは難しい
…っていうか、あたしには無理なので、大雑把に言うと、
Personっていうのは、「期待の束」。
つまり、ある人に向けられる期待を、まとめあげたもの、です。

社会学では、似た言葉に「役割」っていうのがあるけど、
役割が、ある地位についている人びとに共通して向けられる、
一般化された期待を指すのに対して、
Personは、ひとりひとりに向けられる、個別的でより具体的な期待を指します。

例えば、
「先生」一般に向けられる期待(=役割期待)と、
「○○先生」っていう、特定の人に向けられる期待(=Person)、みたいな。

で、Personっていうのは、個別・具体的な期待なので、
その人の就いている職業だとか、
家族構成(と、その人のそこでの位置づけ)だとか、
その人のいわゆる「性格」だとか、「嗜好」だとか、
年齢だとか、性別だとか、
その人と、自分が、これまでどういうコミュニケーションをとってきたのかだとか、
すんごくいろんなことから、つくりあげらていきます。

で、「意外」な場面に出くわすと、
「この人にはこーゆーところもあるんだ」
→「今度からこの人の前ではこれをするのはやめよう」
…てな感じで、つくり換えられたりもしたり。

したがって、Personっていうのは、
何が、その人に対して期待できたり、できなかったりするのかを、
その都度その都度、限定するためのもの、です。

で、何が期待できたり、期待できなかったり、っていうのは、
その人がどういう人として捉えられているのか、ってことなので、
Personを、最初よりもさらにざっくり言うと、
その人「像」とか、「その人らしさ」って感じ。
(なんかもう、学問的な概念定義としてはありえない表現に…。
 ちゃんとした研究者の方々、ごめんなさい↓↓)

んで、何が言いたいかというと、
京極夏彦が「面霊気」の中で使う「仮面」という言葉は、
ルーマンのPerson概念を、非常に、簡単に、かつわかりやすく説明してるなぁ、と。

言うまでもなく、
「Person」(英語で「パーソン」、ドイツ語で「ペルゾン」)の語源は、
ラテン語の「Persona」(ペルソナ:仮面)だし。

なんだか、
長々と書いた割に、言いたいことはそんな短いのかよ、って感じですが、
京極夏彦はホントすごい。
てか、もう、社会学者になっちゃえばいいのに(笑)。
んで、他の社会学用語も、もっとわかりやすく説明してくれればいいのに。

難しいことをわかりやすく伝えるスキルとセンスがほしい…。

あ、補足ですが、一応。。。
あたしのPersonの説明はかなり杜撰なので、
ルーマンのPersonについてもっとちゃんと知りたい方は、以下を参照ください。
『社会システム理論』〈下〉の第8章(だっけか?)「構造と時間」。
 (たぶんその章に、「期待、役割、パースン」とかっていう節があったハズ)
『ポストヒューマンの人間論―後期ルーマン論集』の第4章「人格という形式」。
 (ルーマンの著作の中で唯一、Personを中心的に取り扱った論文)


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