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発情装置 [専門書]

上野千鶴子の『発情装置—エロスのシナリオ』(1998/筑摩書房)を読みました。

なんだか扇情的(?)なタイトルですが、
立派な学術書です。
「発情とは、自然的な行為ではなく、文化的な行為である」(p.272)と明言したうえで、
発情をうながすもの(=発情装置)のからくりについて論じた一冊。

テーマとされるのは、
買春/売春、セックス・ワーク、ポルノグラフィー、アートにおける裸体、美少年マンガ、
セクシュアルな関係/親子関係、恋愛、性交、ホモセクシュアル/ヘテロセクシュアル…
など、非常に広範。

そうしたそれぞれのテーマについての上野千鶴子の考察は、
「この人は、とことんフェミニストなんだなぁ」と感じさせる。
あたしとしては、共感できる部分が多く、非常におもしろかったです。

ところで、あたしがこの本を初めて読んだのは、約2年前です。
その当時のあたしには
ジェンダーやセクシュアリティに関する最低限の知識さえ、ほとんどなかった。

で、今改めて、この本を読み直してみて、
昔読んだときにはそれほど気にならなかったのに、
今では、ほとんど感動的なほど共感できる言葉が…。
それは、
「ジェンダー・スタディズとは
 当事者のジェンダー・アイデンティティを無傷のままにはおかない」(p.249)。

本当にそうです。
誰もジェンダーとは無関係でいられないから、
ジェンダーについて考えることは、自分について考えることになる。
考えた結果が、つねに、自分にリフレクションされる。
だから、しんどい。
学べば学ぶほど、考えれば考えるほど、しんどくなる。

あたしは意志が弱いので、いつもいつも、しんどいからもうやめようと思うんだけど、
すでに知ってしまっていることを忘れて暮らす、というのはなかなか難しくて
(なまじ、世間一般のジョーシキよりも、フェミニストの考え方の方がしっくりくるばっかりに)、
もう引き返せなくなっている。
で、引き返せないなら進むしかないじゃん、と思って、
進むんだけど、やってると、またしんどくなって、また逃げたくなる。
その繰り返しです。

こういうしんどさを抱えて、日々研究を続けている人たち、っていうのは、
ホントにすごい…。
強いなぁ、って思う。

…って、今回は、なんだかどっかの悩み相談室みたいになっちゃったけど、
これ、ブログだし、ブログは日記だし、
たまにはこーゆーのもありかしら。


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コメント 2

はじめまして。
だいぶ前の記事でしたが、内容が興味深かったので。。

研究結果が自分に跳ね返ってくる。面白くもあり、場合によってはつらいんでしょうね、きっと。

修論お疲れ様でした。
by (2007-02-19 02:25) 

mia

はじめまして、コメントありがとございます★
この記事書いてもう約半年。その半年間で、他にもいろいろジェンダー関係の本を読んで、修論のテーマもジェンダーで書いたものの、悩みは未だに解決せず。…というか、逃げたくなる頻度が高くなっただけです(笑)。
でも、確かにおもしろいし、知ることで救われる部分もあるので、どうにも我慢できなくなって本格的に逃げ出すまではがんばります☆
by mia (2007-02-19 22:31) 

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