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結婚の社会学 [専門書]

山田昌弘の『結婚の社会学—未婚化・晩婚化はつづくのか』(1996/丸善ライブラリー)を読みました。

これは小説と違ってネタバレもないので、簡単に概要を…。

本書では、結婚希望者が減っているわけではない、にもかかわらず、
結婚年齢が上昇し、独身者が増え続けているのはなぜか、という疑問を出発点としています。
で、統計資料を交えた考察の結果、山田昌弘は、
1.経済の低成長を直接の原因とする「女子上昇婚」の機会の減少
2.男女交際の活発化を直接の原因とする「恋愛結婚システム」の変化
という2つに、現在の日本の結婚難の原因を求めます(p.158)。
そして「結婚したくても『できない』人が、一定の割合で生じることは、
現在のシステムを前提とする限り、不可避」(p.160)であるとしたうえで、
今後も結婚難は「徐々に進行する」(p.166)と予測しています。

以上が大雑把な概要です。
詳しくは、『結婚の社会学』、
あるいは、山田昌弘の他の本(『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』など)にも似たようなことが書いてあるので、
そちらをどーぞ。

そして感想。
あたしはつねづね、山田昌弘は人の関心をひく言葉を考えつくのがうまい!と感心してるのですが
(「パラサイト・シングル」とか、「希望格差社会」とか)、
この本にもひとつ、忘れられない言葉が…。
それが
「もっといい人がいるかもしれないシンドローム」。

この言葉は、
付き合っている人がいても、あるいは気になる人や興味のある人がいても、
他にもっといい人がいるかも、これから出会えるかも…と、
結婚を迷い、先延ばし先延ばしにしていく人々を言い表した言葉です。
ちょっと長くて言いづらいけど、
「結婚はしたいんだけど、特定の相手を想定するとなかなか決心がつかない」
…という若い人たちの心情を一言で適切に表現した、
まさに絶妙な一語。

それから、山田昌弘の論考を読んでいて、いつもおもしろいなぁと思うのは、
経済成長との関連で、社会現象を読み解くこと。
あたしは歴史が苦手だし、経済も疎いので、
自分が論文書くときには、あまりそういう見方はしない…というか、できないのです。
だから、山田昌弘の本を読むと、たまに
そーゆー風にも見れるんだぁ、とびっくりします。

ただ、やっぱり、
新書で、一般向けということもあって(?)、
若干の論理飛躍や、それホント?っていう論理構造、
根拠や裏付けが明確でない言説(あんなに統計載せてて!)などもちらちら見受けられます。
なので、読むときには少し注意が必要です。


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